「 考え方 」一覧

フラットバーの使い方

スチールのフラットバーは、コストも安いと言うこともありますが、線を細く見せることができるので、手摺りによく使っています。
あまりに繊細なイメージをしてしまうと、揺れたり曲がったり、手摺りとはとても言いがたいものになってしまうので、注意が必要です。
私も、何度か失敗してます。(^_^;

フラットバーを組み合わせた手摺り


この手摺りは、フラットバーを組み合わせて剛性を持たせています。
水平部分と斜めの部分は分割してデザインし、手摺り子をボルト止めにして一体にすることで揺れを防いでいます。
防錆と質感を良くするため、溶融亜鉛メッキ+リン酸処理としています。
意図してつくれない結晶模様がとても気に入っています。


灯りの調和

足元を照らす灯り。
玄関ポーチのスポットライト。
軒裏に反射する灯り。
室内から漏れる灯り。

アプローチの灯り


家に帰るという暮らしの中のシーンを、優しく誘うような照明計画です。



灯りの質

ほとんどの建築につかわれる照明器具はLED化しています。
コンパクトで効率が良く、長寿命というのは良いのですが。。。

ニッチのピンスポット


こと住宅の灯りとして考えた時、一言で言って、目に刺さるほど「ジャープ過ぎる」と感じます。私だけでしょうか?
これからさらに開発が進んで、住宅らしい「柔らかな灯り」ができると良いなと思いますね。

ファミリールームのお月様


足元を締めよ

外壁に通気層を取る場合に一番気になるのは、基礎と外壁との段差です。
これが、外観を著しく損なうことになります。
このようなことは、一般の人には気にもならないことだと思いますが、外観の印象が締まらないのです。
既製の通気水切りを使うと、この段差の解消が難しくなります。
だからといって、特注するのも全体コストを考えると厳しい場合もあるわけです。

外壁通気のディテール


工事中の写真ですが、アルミアングルを見切り材として、隙間を通気口にしています。
上が外壁の杉板ですが、コンクリート(基礎)の部分にも杉板を張って、段差を解消します。

「足元を締めよ」

これ、大切です。


細部を消すことを考える

建築を考える時に、結構やっかいなのが建具です。
機能性は勿論ですが、そのプロポーションも空間の雰囲気を左右します。
開き戸の場合は、どうしても金物(レバーハンドル、丁番、錠)などが必要になるため、煩雑になりがちです。
その場合は、隠し丁番を使うようにしています。それだけでも印象はまったく違います。

多摩平の家
引き込み戸


この建具は、引込み戸です。(壁の中に引き込む)
一切の金物は見せない。引き手も金物は使わない。三方にあるはずの枠も見せない。
細部を消すことに徹しています。
そのようにしてできた空間は、とてもシンプルです。
材質は、タモ練り付けです。
柾目か板目か。これも重要な選択肢になります。
柾目はさらにシンプルな雰囲気になりますが、ちょっと堅すぎる印象があるので、今回は板目を選択しました。
自然塗料(白)拭き取り仕上げにして、内壁との調和を図っています。
シンプルで柔らな雰囲気になりました。


面一に納めるということ

建築の用語で「散り」(ちり)と言うのがあります。
例えば、仕上げの異なる部分や壁と建具枠、柱などの段差やその寸法差などで使われる用語です。
年末の投稿「建築要素」でも記事にした建具枠の部分が完成しました。

仕上げと建具枠

建具枠は色の違う部分です。
壁の仕上げとほとんど面一に納めています。

建具枠と仕上げの散り

建具枠と仕上げの納まりです。
建具枠の散りは2mm。精度が高くないと破綻する納まりです。
下地はプラスターボードですが、大工さんの技能が高く、丁寧に精度良く施工されています。ここで精度が悪いと、仕上げも上手くいきません。
また、塗装職人の技能もかなり高く、丁寧です。パテ処理3回+ペーパー掛け工程を踏んでいます。
かなり厳しい納まりを要求しましたが、精度高く施工できました。職人さんには感謝です。
職人さんとも話をしたのですが、あと1mm散りを多く取っても良かった。とても繊細な納まりになっています。


建築と景観

美しい建築だなと思う。きっと自然と人間の行動によって形成された視覚的な環境とひと繋がりになっているからだ。

竹中技術研究所


竹中技術研究所

竹中技術研究所


建築の「立面」が、単なる間取り決定の産物では景観は良くなるはずもない。
まして、都市部においては敷地規模も狭くなり、境界ぎりぎりに建てられるわけだから、間取りや経済性だけの結果が立面であるような建築は景観に混乱を生み出す。
住宅で言えば、確かに私的なもので私財でつくられるわけだから、思うようにしても良いのだけれど、もう少し私的かつ社会共有の財産として景観を良くするような視点を持たないとだめだと思う。
グローバル化の波にのまれ、物質と価格だけの指標でつくられたものに、魂が存在するはずもない。
だからこそ、日本の精神的伝統や文化という、皆がおそらく潜在的に持っているであろうDNAを呼び起こす必要があるのかも知れない。


3.5mのカウンター

昨年末に、4.5mのカウンターというのを書いたばかりですが。
今度は、3.5mのカウンターです。
カウンターが好きだから・・・。
というわけでもなく、当然ですが建築主のライフスタイルを考えての提案であるわけです。

ナラ集成材のカウンター

長さ3.5m、奥行き80cm、厚さ10cmです。
吹抜けに向かって少しはみ出すようにしてつくっています。
先端は、物が落ちないように少し工夫して。

吹抜けに面するカウンター

要望は仕事ができるスペースが欲しいと言うことだったのですが、それだけならこんなに大きなものは必要ないわけです。
人は、暮らしの中で一つのことをするわけではないし、家族もいるわけです。
ですから、いろいろなアイディアを見つけて、使い方を工夫して欲しいと思って提案しました。

それをつくっていくのが暮らしなのだと思っています。


建築要素

建築空間というのは、いろいろな部材でできているわけですが、ものすごく単純化すると、床、壁、天井(屋根)で構成されているわけですね。要素という言い方はちょっとわかりにくい言い方なので、単純に部材と考えて下さい。(この場合の要素というのは、空間を構成するものと考えています。)
部材の1つに、建具があります。(建具というのは、簡単に言えば扉です。)
建具は、枠と戸(開き戸や引き戸など)で構成されていますが、この部分の「つくりかた」で空間の印象(雰囲気)は大きく変わります。
例えば下の写真。
左に建具がありますが、枠がはっきりと見える様につくっています。ごく普通のつくりかたです。
これは、梁や柱を見せるように空間をつくっているので、建具の枠も見える様にしています。

鹿屋の家 玄関ホール

しかし、今施工中の多摩平の家は、少し異なるつくりかたをしています。
引き込み戸になっているのですが、枠の考え方は鹿屋の家と同じようにつくるのが普通の考え方です。
多摩平の家の場合は、木部が現しになっている部分がなく、壁や天井は吹き付け材で仕上げます。
ですから、壁や天井の部分はできるだけ部材を目立たないようにしようと考えています。
枠と壁のチリは2mmです。つまり仕上げ材を施工すると、ほとんど面一になります。
建具の枠を、「消す」ということを考えて設計しました。

多摩平の家 建具枠(縦枠)

多摩平の家 建具枠(上枠)

建具の枠を「見せる」のと「見せない」とで、どう違うのか。空間の印象(雰囲気)がどう変わって見えるのか楽しみです。(イメージできますけどw)
下地の状態なのでイメージし難いですが、完成した時にまた写真をアップして比較したいと思います。