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美を考える

WYVERN

WYVERN

建築史の講義だったと思いますが、建築とはどういうものか?と問われたことがあります。建築は「用」「強」「美」を備えていなければならないと。
建築学科の学生ならば、誰でも知っているでしょう。紀元前1世紀ローマ時代のウィトルウィウスが著した建築十書で、建築理論を説いた最古の書物とされています。

この3つの中の「美」。

建築に備わる「美」とは、どうとらえれば良いのでしょうか?
単に美しいということでしょうか?
確かに建築は美しくあるべきです。しかし、美しさという解釈では、主観や時代で変わってしまいます。
建築は、その社会情勢や時代で変化してきていますから、当然その解釈も変わると言っても良いのかも知れません。
しかし、それでは真理とは言えないのではないかと思うのです。
例えば、絵画をみたりすると、その美しさだけではなく、風景や人物がまるで目の前に存在するかのような生々しさを感じたり、知っているはずの風景が、自分が認識していた風景とは違って表現されていたりします。つまり、そこに自分には見えなかった新しい世界が表現されているわけです。だからこそ、驚嘆し、心揺さぶられ、感動するのではないでしょうか。いままで、見えなかった新たな世界を表現すること。

これこそが「美」ではないかと思えるのです。

建築に置き換えると、美しく感動を呼ぶような新しい空間ということになります。どれが優先ということでもなく、すべて同等の要素です。建築は3つのどれを欠いても成り立たないのです。どういう空間なのかと、問われても、私のような文才無き、稚拙な文章では、表現することができません。
そもそも、言葉や文章で表現することには無理があって、感性でとらえるべきものなのかも知れません。
たまたま読んだのですが、数学者の藤原正彦さんの著書に興味深いことが書いてありましたので、付記しておきます。

以下引用

この世のあらゆる事象において、政治、経済から自然科学、人文科学、社会科学まで、真髄とはすべて美しいのだと私は思っています。・・・中略・・・少なくとも自然科学では「美」が絶対です。数学者が数学をつくる時、実用に役立てようという考えはまず頭にまったくありません。美しい理論にしよう、美しい定理にしようと常に心がけます。証明の道筋については常に美しいものが真理への道筋なのです。

これは、凄いです。実用をいっさい考えず、ただただ美しさを追求して行くことが、結果として実用になるということです。
また、数学者ヘルマン・ワイルの言葉も記されています。

真、善、美は同じ一つのものの三つの側面に過ぎない。

真は善、真は美である。
善は真、善は美である。
美は真、美は善である。
正に真理です。

引用部分
日本人の誇り 藤原正彦著
文春新書


ライフスタイル|キッチンのデザインをとおして見えるオーナーの価値観|

価値観やライフスタイルが多様化するなかで、住み手にとって何が必要なのか?本当に必要としているものは何か?
住み手と、設計の打ち合わせを何度も重ねる中で、見えてくるものがあります。
徹底して必要な機能だけを組み込んだキッチンです。
アイランド型にしていますが、手元は隠すようにカウンターは見えなくしています。
キッチンカウンターは、人工大理石、キャビネットはウレタン塗装です。
ガスコンロは2口で十分。グリルも不要。その分収納を大きく取っています。
大型シンクと、下部に食洗機。
カウンター背面の収納スペースには、左右に冷蔵庫と、棚板を設けています。
扉は無い方が使いやすい。しかし正面に見えては見苦しいことからこのようにしています。
天井は3.2mの高さがあるため、レンジフードのようなものは使えませんし、何より見苦しい。換気扇はキャビネットに取り付けて、床下から排気しています。
「必要にして十分」オーナーの言葉です。
それこそが、価値観であり、ライフスタイル(何がしたいか)と言うことです。オーナーは、フランス留学の経験から得た住まいに対する想いが明確でした。
「機能的で生活感があり、身の丈を知り余計なものをそぎ落とした潔さを感じる。室内には、使うものか美しいものしか置きたくない。」
家具は、今まで使っていたアンティーク家具をそのまま使っています。
だからこそ、住まいの空間は徹底してシンプルにつくっています。
床もすべて450角の磁器質タイル
壁面はガラスか白壁
天井も白
必要なもの以外そぎ落としたライフスタイル。いままでの家具も、しっくりなじみます。

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ダイニングとキッチン
リビング、ダイニング、キッチンはワンルーム。
3.2mの高い天井。
背面の四角い箱は収納スペース。
アンティークテーブルが映えるモノトーン空間。

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キッチンカウンター
必要にして十分
オーナーのライフスタイルを表しています。

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ダイニングキッチンの図面
1枚目の写真と同じ方向の図面です。
中央がキッチンキャビネット。その上が収納スペースです。

 


ディテールを考える

構造材とカーテンウォールの枠材を兼ねたディテールです。
鉄骨造で、鉄材をそのまま現すというのは、実はとても難しい。接合部がそのまま見えてしまうので工夫が必要になります。
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これは、柱材と無目材の接合部。角パイプをFBで挟み込んでいます。柱材に角パイプを水平に溶接して無目材のFBの間に差し込んでボルト接合しています。
単に構造材だけではなく、ガラスを受ける枠材としていて、カーテンウォールの部材としても機能しています。FBに挟まれた角パイプは、電気ケーブルの配線スペースにもなっていて、コンセントやスイッチもこの部分に設置しています。

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幅2m程の廊下状の中庭は、すべてガラスカーテンウォールになっていて、室内と繋がる空間になっています。


キッチンのデザイン

キッチン、ダイニング、リビングをワンルームで設計する時に注意しているのが、機器的なキッチンにならないようにデザインしています。
キャビネットの材質や色はもちろんですが、冷蔵庫に至るまですべてカラーコーディネイトしないと、機器に囲まれたリビングになってしまいます。

この住宅は、シンク、食洗機をアイランド型のキャビネットに収めて、調理器は壁面に配置しています。冷蔵庫や電子レンジもビルトインです。

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アイランド型の場合は、キャビネットそのものを、家具のように見せる工夫が必要です。
足元の蹴込み部分(台輪)を深くすることで、床から少し浮いたように見せています。
カウンタートップはコーリアン、キャビネットはウレタン塗装です。

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キッチンカウンターとダイニングテーブル
ダイニングテーブルも、この住宅のためにデザインしたものです。ウレタン塗装鏡面仕上げ。



質感を大切にするということ

田園の家玄関ホール

田園の家 玄関ホール

自然素材などど言われて久しいが、そもそも日本の住宅は素材ありのままにつくられてきはずだ。
いつしか、新建材などと銘打った材料?がでてきて、偽物で埋め尽くされた。
決して材料開発や技術の進歩を否定するものではないが、人というのは、視覚だけで空間をとらえているわけではない。
触覚(手触り)、嗅覚(香り)を感じて、その空間の空気感をとらえている。
杉の木理、香り、手触り、塗り壁の手の痕跡。
人が住むのだから、素材を素直に使い、その質感に包み込まれるような空間をつくりたいと考えている。



卒業設計審査会

今日は海洋建築工学科の卒業設計の審査会に行ってきました。今年度は、今一歩・・・という印象でした。
もう少し自身のテーマを突き詰めて、表現できていればなぁ・・・。惜しい。学生達にとっては、ギリギリまで頑張った結果であるのだろうと、採点はちょっと甘かったかも知れません。頭がクリアになったら、客観的に自身の作品を見直して欲しいと願っています。
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講評会

今日は第2課題の講評会でした。これで平成27年度のデザイン演習2はすべて終了したことになります。
各班2名ずつ優秀作品を選定し、全14名のプレゼンテーションが行われました。学生達にとっては、自身の作品をアピールする機会となります。各自パワーポイントをつかってのプレゼンテーションです。自身の作品をどのようなプロセスで説明していくのか、聴く人にどう伝えると理解してもらえるのかなど。単に課題を完成するだけではなく、それを人に伝えるというスキルを身につけて欲しいということですね。
先生方からは、鋭い質問や指摘が突きつけられます。それに対して、自分はどのように考えたのか。適確に答える必要もあります。
教室保存の優秀作品は、満票を獲得した黄君の作品。

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成長の跡

今日は2年生のデザイン演習2の最終課題の提出でした。悪天候の中、なんとか皆提出できたようです。なんとかして学生達に成功体験して欲しいという一心で、毎回の講義で厳しくも(楽しく?)指導してきました。
与えられる課題は、学生達にとって初めてのことであり、とても高い壁であるはずなのです。自分がそうでしたから。
答えは自分で探すしかない。誰も与えてくれるわけではない。
決して諦めず。自分がどこまでできるか。やりきれるか。
そんな葛藤の中で、やり遂げてこそ自信となって成長できるということ。
これからも、そういう思いを抱いて成長していって欲しいと思います。次週は、講評会で教室保存作品などを選び、今年度の授業は終了となります。学生達のプレゼンテーションが楽しみです。

日大船橋校舎キャンパス

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