性能で空間を語れるか

30年近くにわたって住んできたわが家は、今時の省エネ住宅を完全無視したような内外コンクリート打ち放しの住宅で、夏暑く、冬寒い家だ。好きでそうしたのだから後悔はしていない。しかし、それに巻き込まれた家族は大変だったと思う。
次世代に残す住まいは、そうもいかないだろう。
そんな戦うような家に住んできた身としては、断熱性の高い住宅というのがどのくらい快適?なのか。
体感として経験していないから、わからない。少なくとも、ウチよりは数段住みやすいに違いない。
断熱性や、気密性を高々と歌うつもりなどまったくないが、法律で縛られては無視するわけにもいかない。

可変透湿気密シート

断熱材は、もっともコストパフォーマンスの良い、現場発泡ウレタンA種3だ。
当然室内側には内部結露を抑制するために、防湿シートが必要になる。
このシートは夏冬対応の可変透湿性能を持っている。
本当にこの通りの性能なのかは、計算でしか確認できない。
この住宅は、断熱等級5の性能評価を申請取得している。
コストバランスを考えての選択だ。

当然耐震性も重要だ。法律だけ守れば良いわけではない。どんな建物でも構造設計は必要なのだ。4号特例など関係なく、今まですべてそのように設計してきた。
ほとんどの人が、一生掛けてローンを組んでやっと実現するような住まいが、たった1度の大地震で住めなくなったり、まして倒壊など論外だ。
プランと開口部の検証を重ね、結果性能評価で耐震等級2とした。

しかし。
このような性能は、つくるための指標であって、
空間のおもしろさや住宅の魅力を表すものではない。

そんなところばかりを見て、本質的な部分を見ない(あるいは見ることができない)と、ろくな建築(住宅に言い変えても良い)はできないだろう。

建築は、空間的な魅力こそが本質だ。